Windows への TeX インストール(簡単 W32TeX・後編)
前回、W32TeX と関連ソフトウェア(dviout, Ghostscript, GSview, TeXworks, ispell)のセットアップを、TeX インストーラ 3 を用いて極めて簡単に行いました。これで既に TeX を利用する基本的準備はできています。というわけで、テストも兼ねて実際に LaTeX を使ってみましょう。
もし仮にインストールに失敗していた場合(そもそもインストーラがうまく動いてくれなかった or インストールしたつもりが下のテストで失敗した)は、それに続いてトラブルシューティングの項目をつくりましたので、ご覧下さい。
初めての LaTeX:テストも兼ねて
正しくインストールできたことの確認も兼ねて、TeXworks で日本語を入力し、LaTeX で処理してみましょう。
デスクトップに TeXworks のアイコンができているはず(もしくはスタートメニューに TeXworks が入っていればそちらでもかまいません)ですので、これを起動します。ディスプレイの左半分に表示されるはずです。
エディタ部分に以下のソースをコピペしてみましょう。できたら neko.tex という名前でデスクトップにでも保存してください。
\documentclass{jsarticle} \begin{document} 吾輩は猫である。名前はまだ無い。 どこで生れたかとんと見当がつかぬ。 何でも薄暗いじめじめした所で ニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。 吾輩はここで始めて人間というものを見た。 \end{document}
TeXworks 左上の緑色の丸に三角ボタンの右側に「pdfpLaTeX」と表示されていることを確認しましょう。この状態で三角ボタンをクリックします。すると、なにやら処理が行われてディスプレイの右半分に PDF ファイルがプレビューされます。
正しく表示されていれば、TeX インストーラ 3 がこなしてくれた日本語のセットアップが正常であることの証拠です。
コマンドプロンプトからの LaTeX 処理
LaTeX を使うために TeXworks は必須ではなく、単に好きなテキストエディタ(極端な例ではメモ帳も!)でソースを書き、適切なプログラムを使って処理(タイプセットといいます)さえすれば大丈夫です。初めての方に TeXworks をおすすめしているのは、コマンドプロンプトからコマンドで操作するという作業に慣れていない場合にいちばん簡単で楽だからです*1。
一度 TeXworks を終了しましょう。そして、コマンドプロンプトを起動します(スタートメニューから「すべてのプログラム」→「アクセサリ」と進むとあるはずです)。起動した直後はホームディレクトリ、おそらく「C:\Users\ユーザ名」というフォルダにいる(=このフォルダ内のファイルを対象に操作を行える状態)はずです。
先ほど neko.tex を保存した場所に移動するため、cd コマンドを使います。先ほどデスクトップに保存したので
cd Desktop
というコマンドを入力します(あるいは cd C:\Users\ユーザ名\Desktop でもよい)。すると、いまデスクトップにあるファイルを対象にプログラムを実行できる状態になりました*2。そこで、LaTeX 処理をコマンドでやってみます。
platex neko.tex dvipdfmx neko.dvi
を実行します。platex の方で dvi ファイルが生成し、dvipdfmx の方でこれを PDF に変換したことになりますので、デスクトップに neko.pdf というファイルができているはずです。2回もコマンドを実行するのが面倒なので、これを一度で行うコマンドとして
ptex2pdf -l neko.tex
や、先ほど TeXworks の pdfpLaTeX というボタンが内部で呼び出したプログラムを使って
pdfpLaTeX neko.tex
が挙げられます。
TeX ファイルの関連付け
先ほど作成した neko.tex ですが、このままではダブルクリックしても開くことができないのではないでしょうか。これでは不便なので、拡張子 .tex が付くファイルは今後 TeXworks で開けるように、ここで設定してしまいましょう。neko.tex をダブルクリックすると表示されるウィンドウで「インストールされたプログラムの一覧から…」を選択します。
さらに一覧に表示されていないようなら「参照」ボタンから C:\w32tex\share\texworks へ移動すると、TeXworks.exe があるはずです。
選択して OK していくと、次のように neko.tex に TeXworks らしきアイコンが表示されるはずです。これで関連付けは完了です。
TeXworks などの統合環境のメリット・デメリット
TeXworks は、「\」(バックスラッシュ;環境やフォントによっては半角の円記号に見える)で始まる TeX/LaTeX の命令(制御綴;コントロールシーケンス)をわかりやすく色付けしてくれます。また、例えば \documentclass と入力したいときに \doc まで入力して [Tab] キーを押すと、入力補完が働きます。このように「TeX/LaTeX ソースを編集しやすくする工夫」と「プログラムによるタイプセットをボタン一つで行う」などによってサポートしてくれるエディタを、TeX/LaTeX 用の統合環境とよびます。TeXworks は Windows で人気のある統合環境の一つです。ほかにも統合環境は選択肢がありますので、あまり TeXworks が気に入らない場合はほかを試してみるとよいでしょう。
一方で、統合環境はトラブルシューティングを難しくする面もあります。このような場合には一度 TeXworks を離れてコマンドで行えば、今直面している問題について
- 単に統合環境(TeXworks など)の設定ミスなのか
- それとも TeX 本体の方に問題があるのか
という原因の分離ができます。今後困ったときは一度試してみてください。
LaTeX の使い方(外部リソースへの案内)
これは専門書や Web サイトにお任せします。有名なものは奥村先生の「LaTeX2e 美文書作成入門」や TeX Wiki でしょう。TeX Wiki にも基本的な LaTeX の使い方を含めた様々な情報がありますので、一度訪れてみてください*3。
さて、残しておいた★アセトアミノフェンおすすめ設定★は次回。
TeX インストーラ 3 トラブルシューティング
前回の記事では理想的な例を示しましたが、タイミング(運?)によっては同じ方法でうまくいかないことがあります。実際に私も以前トラブルに見舞われたことがありました。というわけで自分の記憶を掘りおこし、経験済みのエラーを無理やり発生させつつスクリーンショットを撮ったので、ここで挙げておきます。
「不明なエラーが発生」
これは W32TeX の情報を取得するのに失敗した場合に起こります。運悪くサーバのメンテナンス中にダウンロードした場合などがこれにあたります。
この場合は abtexinst_log.txt というログファイルを見に行きましょう。多くの場合、「W32TeX のインストール設定を行います」という画面に戻り、URL を別のものに変えてればうまくいくはずです。
追記 (2015-06-11) :最近 Ispell というスペルチェッカが数年ぶりに新しいバージョンに更新された影響で、TeX インストーラ 3 が「不明なエラー」を吐くようです。abenori さんにも報告済みです → 2015-07-11 の更新で解消。こちらを参照してください。
なんだかチェックボックスのリストが足りない
これはエラーだと気づきにくい例です。以下の画像では Ghostscript の部分が空っぽになっています。サーバにうまく接続できていないのだと思います。
この場合も「戻る」で該当する項目の URL を変更してみてください。