Acetaminophen’s diary

化学に関すること,TeXに関すること,ゆきだるまに関すること。

「PowerPointやPDFにマルチメディア」の今後

全7回にわたって「PowerPoint や PDF にいろいろなマルチメディアを埋め込む」というテーマで書いてきた。ここですべての記事をダイジェストでまとめるとともに、今後探索すべき課題をまとめておく。

この連載では全てフリーソフトを使用して PowerPoint や PDF にマルチメディアを埋め込むことを目標としている*1。したがって、有料ソフトの期間指定体験版などは用いずに検証を行っている。ただし、僕は学生なので教育機関に所属する場合のみ無料のソフトを使用することもある。このことを前提に読んでいただきたい。

 

全7回分のダイジェスト

用いる記号の意味

Windows/Mac の対応状況を明記した。個人的評価として★★★は「特におすすめの決定版」を、★★や★は「現状の最善策」を示す。ただし、3D 模型に関しては元ファイルが分子模型の場合にしか役に立たないものも含まれるのでこの方式を適用しない。

まず「化学専門向けの決定版」に☆☆☆を付け、「化学専門向けの現状最善策」に☆☆や☆を付けたうえで、他分野で「応用可能性が高い」ものに◎、「応用可能性が部分的」なものは△、「ほぼ無い」ものには×を付けた。

評価の一覧

  1. GIFアニメ:PowerPoint の場合→第1回
    ドラッグアンドドロップで一発(Win/Mac)★★★
  2. GIFアニメ:PDF の場合(TeX 使用)→第1回
    animate パッケージを使用(Win/Mac)★★★
  3. 動画や音声:PowerPoint の場合→第2回
    挿入タブまたはドラッグアンドドロップ(Win/Mac)★★★
  4. 動画や音声:PDF の場合(TeX 不使用)→第2回
    Foxit J-Readerを使用(Win)★★
  5. 動画や音声:PDF の場合(TeX 使用)→第2回
    movie15_dvipdfmx (media9) を使用(Win/Mac)★★★
  6. 動く3D模型:PowerPoint の場合→第3回
    Discovery Studio Visualizer を使用(Win)☆×
  7. 動く3D模型:PDF の場合(TeX 不使用)→第7回
    Bentley View V8i を使用(Win)☆◎
  8. 動く3D模型:PDF の場合(TeX 使用)→第4567回
    (1) MeshLab で U3D + movie15_dvipdfmx (media9) を使用(Win/Mac)◎
    (2) Asymptote を使用(Win/Mac)◎
    (3) Jmol で IDTF 経由 U3D + movie15_dvipdfmx (media9) (Win/Mac)☆☆☆△
    (3') Jmol で OBJ 経由 U3D + movie15_dvipdfmx (media9) (Win)◎

評価の理由

★★★は言うまでもないと思うので割愛し、それ以外について書いておく。

Foxit J-Reader

4.で「★★」とした。Windows だけを考えると★3つでもよいのだが、Mac で全く使えないので1つ減点。何か Mac の代替策を見つけたい。

Discovery Studio Visualizer

6.で「☆×」とした。自分の Windows PC 以外での流用が難しいのが残念。PowerPoint ファイルだけ持ち歩けば十分な方法を見つけたいし、Mac の代替策も探したい。他分野での応用面でも問題あり。

Bentley View V8i

7.で「☆◎」とした。操作が非常に簡単であり、入力形式が豊富なので他分野でも応用可能。ただし、テキストと同時に出力する方法が不明であり、Mac では使用できない。

MeshLab

8.(1)で「◎」とした。グレースケールしか扱えないのが難あり。しかし、入出力形式が多いので他分野で応用可能性がある。

Asymptote

8.(2)で「◎」とした。現状では日本語を含むソースの扱い方が不明である。公式ギャラリーを見る限り多様な用途がありそうなので一応◎としたが、使いこなすまでが大変なうえ、利用者が少ないため主流とは到底いえそうもない。

Jmol (IDTF)

8.(3)で「☆☆☆△」とした。Jmol が分子模型の表示に特化したプログラムであるため化学系には最適である。化学以外で Jmol は使えないが、IDTF 形式というフォーマットは VRML に類似した中間生成ファイルであり、実は他の分野でも利用されている*2。この「IDTF は容易に U3D に変換でき、PDF に取り込める形式である」という点は知っていて損はない。

Jmol (OBJ)

8.(3')で「◎」とした。8.(3)と同様に Jmol を使用しているが、OBJ から U3D への変換に利用した DAZ Studio は Windows でしか使用できない。化学系で使うには高機能すぎるうえ、入手からインストールまでが大変なのも難点。さらに、TeX ソースを同時出力してくれないのでここでも一苦労。ただし、入出力形式が多いため他分野でも応用可能である。より手軽な方法や Mac での代替法を探したい。

 

他の情報源

僕の連載では基本的に「既存のマルチメディアファイルを取り込む」という方式をとってきたが、TeX を用いる場合は PDF で以下のようなアニメーションが可能である:

僕の方式に近い他の情報源としては以下のようなものもある:

なお、以前の第3回の記事で senopen さんから Blender や MathGL も使えそうだというコメントを頂いていたが、MeshLab と Asymptote 以外これまでに使ったことがなかったため、新たにこれらを探索することは今回しなかった。

 

最後に

というわけで、全7回にわたって「PowerPointやPDFにいろいろなマルチメディアを埋め込む」というテーマで記事を書いてきた。ここまで一括して方法を解説した記事は画期的ではないかと期待している。つたない部分もあると思うが、学生ならではの記事だと思って大目に見ていただけるとありがたい。

そして、これらをふんだんに使った実用例をあげておく!(2014-11-09)


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*1:もちろん OS の WindowsMac, それに Office は無料ではないが…

*2:例えば MATLAB などが IDTF 形式を経由して U3D を生成する機能を有している。