Acetaminophen’s diary

化学に関すること,TeXに関すること,ゆきだるまに関すること。

APNG についていろいろ調べてみた件

最近発表された iOS 8 では、APNG 画像がサポートされたらしい。

僕は iOS ユーザではないので試すことはできないが、この APNG 形式にはずいぶん前から興味を持っていたので、今日は APNG について記事を書いてみる。

 

APNG の特長と歴史

そもそも僕が APNG という形式を知ったのは3年以上前である。以下の記事を読んで興味を持ち、Windows PC に インストールしていた5つのブラウザで試したのを覚えている。

そもそも PNG という形式が開発された経緯は、既にブラウザの標準的な画像形式であった GIF 形式のライセンス問題に端を発している。

GIFでは、1984年に発表された LZW という圧縮アルゴリズムが用いられている。このアルゴリズム特許権を取得していた米 UNISYS 社は当初、その利用に際して利用料を請求しない方針であった。しかし、GIF の普及が進んだ1995年になって突然、特許権を行使すると発表したのである。

これに反発したユーザが GIF のフリーな代替形式として開発したのが、静止画像形式 PNG とアニメーション画像形式 MNG である。初めに作られた PNG は圧縮アルゴリズムとして Deflate を採用し、可逆圧縮の静止画像形式として一定の成功を収めた。しかし、PNG から派生してアニメーション機能を追加した MNG は、構造が複雑かつライブラリが巨大で重いために、ほとんど普及しなかった。

そこで、2004年に Mozilla Corporation が新たに提案した規格が APNG である。APNG は GIF 同様のシンプルな形式であるが、GIF アニメが256色しか扱えないのに対し、APNG は PNG 同様にフルカラーを扱えて透過処理も可能であるため、より美しいアニメーションを実現できる。例えば

などで、同じ画像を APNG と GIF で比較できるようになっている。iOSSafari 8 以降、あるいは Firefox で確認してみると、APNG の美しさが一目瞭然だ。

 

APNG の現状と各 PC ブラウザの対応状況

APNG は2004年に発表されたのだが、米国内では2003年6月20日に LZW の特許が失効し、日本国内でも2004年6月20日に特許が失効したため、再び GIF は自由に使えるフォーマットとして認識され、多くの利用者を取り戻すことになった。このため APNG の普及は遅れ、当の本家 PNG グループは2007年に公式に APNG を不採用とする事を決定している。結果的に Mozilla 以外で APNG がサポートされることはほとんどなく、残念ながら現在に至るまで認知度は低いままである。

らば Q の記事が掲載された2011年当時、PC ブラウザ固有の機能(アドオンなし)について試した時の僕の記録によると、対応状況は以下の通りであった*1

2011年1月10日現在の APNG 対応状況

対応:Mozilla Firefox, Opera
非対応:Internet Explorer, Safari, Google Chrome

バージョン番号を控えていなかったので今となっては不明だが、各ブラウザの履歴を見ると:

  • Firefox では3.0以降で APNG を表示する機能が実装されている。
  • Opera では9.5以降12まで APNG をサポートしていたが、15以降はレンダリングエンジンの変更に伴いサポートを停止した。

とのことで、上のらば Q の記事が掲載された当時の僕の検証は妥当であるようだ。そして2014年になったいま、再び同じ検証を5つのブラウザで行ったところ、以下のようになった。

2014年10月4日現在の APNG 対応状況

対応:Mozilla Firefox
非対応:Internet Explorer, Safari, Google Chrome, Opera

バージョンは以下の通り。

Internet Explorer 11.0.9600.17280
Mozilla Firefox 32.0.3
Google Chrome 37.0.2062.124
Opera 24.0.1558.64
Safari 6.2(注:Windows用は削除してしまったため、Mac用で検証)

現在 Opera はネイティブな APNG 対応を停止していて、拡張機能を別途インストールすれば APNG に対応するという方針になっている。

また Google Chrome でもアドオンが開発され、APNG 対応に拡張できる。

しかし、今回 iOS 8 で APNG がサポートされたことで、APNG の注目度が上昇したことは間違いない。そして、次世代 Safari 8 では APNG 対応が予定されているらしい。

 

APNG の作成と変換方法

APNG は以下のようなオープンソースのツールによって作成・変換できる。

また、高機能なオープンソースの画像編集ソフトウェアである GIMP でも、拡張機能 GIMP Extensions によって APNG 形式を扱えるようになっている。Windows 版は

から入手できる*2

 

追記:LINE クリエイターズでの APNG アニメーションスタンプサポート

2016年6月、LINE クリエイターズマーケットで APNG によるアニメーションを使ったスタンプの制作ガイドラインが公開され、6月下旬から審査開始・7月から販売開始という朗報が出た。

Safari 8 での APNG サポートに続き、GIF アニメーションよりフルカラー・透過に対応した綺麗な APNG がますます普及することになるのかもしれない。

*1:注意:「対応」とは APNG のアニメーション機能を正しくブラウザが再現できることを示している。「非対応」でもちゃんと静止画像としての1フレーム目だけが普通の PNG と同様に表示されるので、見ている側として違和感はない。

*2:日本語の説明は

に詳しい。