Acetaminophen’s diary

化学に関すること,TeXに関すること,ゆきだるまに関すること。

単位展に行ってきた

今日、おもしろいとうわさの「単位展」に行ってきた。

企画展「単位展 — あれくらい それくらい どれくらい?」

会期:2015年2月20日(金) - 2015年5月31日(日)
休館日:火曜日(5月5日は開館)
開館時間:11:00 - 20:00(入場は19:30まで)
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財
後援:文化庁経済産業省、港区教育委員会

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単位展では「空気、水、モノ、光、音、自然環境――そのままでは捉えにくい世界に一定の基準を設けることによって比較や共有を可能にした知恵と思考の道具」である単位に目を向ける。日常生活で使う単位や身近にあるデザインを単位という視点から眺め、体験するという試みが貫かれている。

単位で遊ぶと世界は楽しくなる。単位を知るとデザインはもっと面白くなる。
単位というフィルターを通して、私たちが普段何気なく過ごしている日常の見方を変え、新たな気づきと創造性をもたらす展覧会です。

 

そういうわけで、さまざまな物質で 1 kg にあたる量を比較したり…(上方にあるのは空気 1 kg 分の風船)

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時間を計る(あるいは時間の経過を眺めて楽しむ)さまざまな道具も…

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紙幣や硬貨も通貨単位の「円」ではなく長さや重さの単位で眺めて…

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…と、写真を紹介し始めるとキリがないので、続きの写真の一部は後ほどサブブログに置くことにして、気になったのは「ことばのおもみ」という展示。濁点の“重さ”を 1.00 g と仮定して、ひらがな全ての“重さ”を面積比から算出している。

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これを使って好きな単語を作って重さをはかりで比較するという体験展示も。これについては僕がツイートで拾っただけでもおもしろいものがたくさん。

ほかにも「ねむけ vs. やるき」「わたし vs. しごと」などいろいろ見られたが、気になる点が。もちろん

これってフォントによって違うよね?

調べてみるとほかにも気になった方はいたらしく*1、ご要望にお応えしたい! というわけで、フォントによる「ことばのおもみ」の違いの分析を、画像解析ソフトを使ってやってみることにする。

 

まずは各種フォントの文字を画像化

多くのフォントを扱うので、いつもどおり手軽な XeLaTeX を使う。ソースは Gist に置いておく。使用したフォントの一覧は以下のとおり:

  • 明朝体
    • ヒラギノ明朝 ProN W3、小塚明朝 Pr6N R、IPA明朝
    • MS 明朝、さざなみ明朝、梅明朝、花園明朝A、さわらび明朝
  • ゴシック体
    • ヒラギノ角ゴ ProN W3、小塚ゴシック Pr6N R、IPAゴシック
    • MS ゴシック、さざなみゴシック、梅ゴシック、M+ 1p regular
    • さわらびゴシック、小夏、メイリオ、源ノ角ゴシック Regular

全てのフォントについて「あ」を 100 pt で出力し、TikZ の描画機能で周囲を白に近いグレーで囲んでいる。こうすることで、TeX2img で直接 PNG 画像として出力でき、なおかつ余白を削除した際の画像サイズが固定される。

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ImageJ による画像解析

生物系でとりわけ良く用いられる画像解析ツールが、ImageJ である。Java ベースのオープンソースプログラムで、Windows, Mac をはじめとする広い環境で動作する。有志が開発した膨大な専門的解析用プラグインも利用すればあらゆる画像解析に対応できる。単なる画像変換ツールとしても有用で、知っておいて損はない。今回は標準の機能で画像解析を行う。

画像を ImageJ で開き、メニューの [Analyze] > [Set Measurements...] を選択。

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ここで Area にチェックが入っていることを確認する。

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これが画像の面積を測定対象に含めるという指示になっていて、OK で閉じた後にメニューの [Analyze] > [Measure] を選択すれば、測定結果が別ウィンドウで表示される。画像全体の面積がピクセル単位で面積が表示されている(元画像が 303 px × 303 px だったため)ことがわかる。

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今度は文字の黒い部分だけの面積を測定する。今回はカラー画像ではないので、予め RGB 画像を 16 bit グレースケール画像に変換しておこう。メニューの [Image] > [Type] > [16-bit] を選択すると、R, G, B 各チャネルの数値が統合される。

ImageJ では特定の色をもつ部分の面積だけを測定対象とすることができる。測定対象にする色(今回は黒い部分)を指定するには閾値を決定する必要があるため、メニューの [Image] > [Adjust] > [Threshold...] を選択する。

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適当に範囲を指定し、Apply する。

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先ほどと同様に [Set Measurements...] で、今度は Limit to threshold にチェックを入れる。そうすると、上で指定した色の範囲に該当する面積が記録される。

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全体の面積は先ほどの 91809 であったのに対し、文字の黒い部分は 14441 とわかる。これは「ヒラギノ明朝 ProN W3」の場合で、これをすべてのフォントについて繰り返せば、以下のような表が得られる。

 

明朝体フォント面積
ヒラギノ明朝 ProN W3 14441
小塚明朝 Pr6N R 16612
IPA明朝 14488
MS 明朝 11402
さざなみ明朝 12879
梅明朝 13132
花園明朝A 16330
さわらび明朝 17497

 

ゴシック体フォント面積
ヒラギノ角ゴ ProN W3 19599
小塚ゴシック Pr6N R 21500
IPAゴシック 19964
MS ゴシック 24580
さざなみゴシック 23785
梅ゴシック 22355
M+ 1p regular 21875
さわらびゴシック 22095
小夏 21905
メイリオ 22116
源ノ角ゴシック Regular 21812

 

こうしてみると、ゴシック体の方が明朝体より“重い”こと、またMS 明朝はかなり“軽い”一方でMS ゴシックはかなり“重い”ことがわかる。同様の作業を行えば、フォントどうしで「愛」の重さを比べることもできる。

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なお、ここでの“重さ”は 1 ピクセルを 1 mg と換算して求めた*2が、いかがだろう?

 

追記:2015-03-31 本記事では ImageJ を用いて手動で画像解析を行ったが、「ことばのおもみ」の測定を自動化したい場合は以下の記事を参照。

doratex.hatenablog.jp

*1:本展は AXIS の方も関わっているので、もう少しフォントのところまで詰めてほしかった…「どのフォントの濁点を 1.00 g と仮定する」のように。

*2:濁点を基準にするとどのフォントを標準の単位とするか定められないからである。