PowerPointやPDFにいろいろなマルチメディアを埋め込む(4)
さて、最後は PDF に動く 3D モデルの挿入だ。前回紹介した PowerPoint による方法と異なり、持ち運び可能な PDF は汎用性があるだろう。
動く 3D 模型の挿入:PDF の場合(TeX 使用)前編
やはり僕がこれを必要とするのは分子模型を表示したいときなので、それが可能な方法を説明する。ただし、PowerPoint の場合に比べると幾分応用範囲は広いだろう。
今回の記事は長くなりそうなので、前編と後編に分けることにした*1。今回は前編で、LaTeX を使用する前の準備として、どんな素材を使用するかという点についての解説のみ行う。というのも、この部分だけでも十分に化学系の方には楽しんでいただけるのではないかと思うからである。
今回使用するのは、Protein Data Bank (PDB) や Nucleic Acid Database (NDB) から入手できる「100d.pdb1」というデータファイルである。例えば Nucleic Acid Database (NDB) から入手する場合は
の検索窓に「100d」と入力すると検索結果が表示されるので、Download Data: という欄から Biological Assembly coordinates (pdb format) という項目のリンク先を保存すればよい。
以前の「化学のおすすめソフト (2014-09-01)」という記事で言及した RasMol と Discovery Studio Visualizer を使用して、この「100d.pdb1」というデータファイルがどのような内容なのかを表示してみることにする。RasMol は誰でも簡単に入手でき、Discovery Studio Visualizer は登録すれば無償で入手できる。
試しに Windows にインストールしてある RasMol で表示してみるとこんな感じ。
今回の RasMol 2.7.5.2 による表示では、ファイル 100d.pdb1 を開いた後にコマンドラインから以下のようにして表示を調節した。
select all wireframe false select dna spacefill select backbone spacefill false wireframe 0.2
順に説明すると
- デフォルトでは Wireframe 表示になっているので、すべての原子を選択して Wireframe 表示をキャンセル
- DNA を表す原子を選択して Spacefill 表示に変更
- DNA のうち Backbone に含まれる原子を選択して Spacefill 表示をキャンセル
- Backbone に含まれる原子を太さ0.2の Wireframe 表示に変更(これは GUI の [Display] > [Sticks] と等価)
となる。ファイルを開いた直後から順に各段階でのスクリーンショットを紹介すると以下の通り。
コマンドについては例えば
などが参考になる。ちなみに Windows 版 RasMol は日本語を含むディレクトリにあるファイルを開くことができなかった。
Discovery Studio Visualizer で表示してみるとこんな感じ。
今回の DSV 4.0 による表示では、メニューの [Chemistry] > [Hydrogens] > [Add] で水素原子を自動的に表示し、さらに Display Styles で「高分子だけ Spacefill 表示、低分子は Sticks 表示」になるように調節した。RasMol の時には意図的に周囲の水分子を表示させないように工夫してコマンド操作したが、今回は PDB ファイルに書かれた通り水分子が DNA 分子の周囲に多数表示されている。
さて、こんな「100d.pdb1」というデータファイルを LaTeX を使用して PDF に取り込もう、というのは次回の記事で。
*1:しかも後編がさらに数回に分かれてしまった:2014-09-26 追記