PowerPointやPDFにいろいろなマルチメディアを埋め込む(3)
さて、途中に他の記事を挟んで間延びしてしまったが、引き続き第3回。
前2回分の記事はこちら。
PowerPointやPDFにいろいろなマルチメディアを埋め込む(1), (2) (2014-09-13)
ここになって気付いたが、タイトルの「いろいろなマルチメディア」が「馬に乗馬する」感じで気持ち悪いが、もう引き返せないのでそのままで許してください。
というわけで、今回は PowerPoint に動く 3D モデルの挿入。
動く 3D 模型の挿入:PowerPoint の場合
僕がこれを必要とするのは分子模型を表示したいときなので、その方法について説明する。以下は Windows 用の PowerPoint 2010 で確認した。使用したのは Discovery Studio Visualizer 4.0 と Discovery Studio ActiveX Control、それに ChemSketch 12.0 (Freeware) である。両方とも以前の「化学のおすすめソフト (2014-09-01)」という記事で言及したが、今回は実際にこれらを活用する。Discovery Studio Visualizer に相当する Mac 用の同等ソフトウェアは今のところ見つかっていない。
ChemSketch, Marvin Sketch, Accelrys Draw はいずれも個人利用や教育目的に限り無償で、ユーザ登録により入手できる。商用目的なら ChemDraw を購入するのが王道だろう。
Discovery Studio Visualizer はユーザ登録すれば無償で入手できる。同時に入手できる DS ActiveX Control を使えば、PowerPoint に動く 3D 立体分子模型を埋め込むことができる。
(1) まず、化学構造式描画ソフトウェアで好きな構造式を書く(下は ChemSketch の場合。Template から「Aconitane」を選択した)。
(2) 書いた構造式を選択してコピーし、Discovery Studio Visualizer の "New Molecule Windows" を開いてウィンドウに貼り付け。"Structure" から "Clean Geometry" で構造最適化するなど、好きな処理を行って保存。形式は .dsv のままでも良い。
(3) PowerPoint の「開発」リボンから「コントロールの選択」をクリックし、Accelrys DS ActiveX Control Class を選択。
(4) ポインタが十字に変わるので、分子模型を挿入したい領域をドラッグして長方形の枠を書く。
なんか黒い長方形が出現する。これが分子模型を表示する窓になる。
(5) さて、実際にこの窓に分子を表示するには、いったん「スライドショーを実行」する。さっき描いた黒い長方形の中で右クリックメニューから [File]>[Insert File] を選択し、好きなファイルを選ぶ。
すると、下のように分子模型が表示される。
(6) これで「スライドショーを終了」すると、やはり編集画面にも分子模型が表示されている。
(7) これで PowerPoint ファイルを保存すれば、分子模型が埋め込まれた PowerPoint ファイルになる。普通の .pptx 形式で支障はない。もう元の .dsv ファイル自体を直接参照することはないので不要なら削除してもよい。発表でスライドショーを実行しながら、3D 分子模型の Display Style を変更したり、ハンドルで回転させたりすることができるようになっているはずだ。
もちろん Insert File できる種類はいろいろあるので、Protein Data Bank (PDB) などから入手した .pdb 形式の3次元構造データファイルも直接表示できる。注意すべき点として、スライドショー実行中に 3D 分子模型を動かすと、そのたびにファイルを変更したとみなされる(すなわち、PowerPoint 終了時に変更を保存するかどうか聞かれる)。
ただしこの PowerPoint ファイルを他人に渡しても、同じく ActiveX Control がインストールされていなければそちらでは 3D 模型を表示できない。したがって、サンプルをこのブログにアップしても 3D 模型を楽しんでいただけないので、非常に残念だがアップしないことにした。
本当に動かせるので、興味を持った方は試してみてほしい。…とはいっても、ソフトウェアの利用環境が限られていて難しいか…? というわけで次回以降は、持ち運びに便利な PDF ファイルに 3D モデルを埋め込む方法を紹介する。
追記:DSV と DS ActiveX Control はそれぞれ誰でもユーザ登録で簡単に入手可能。また DSV と DS ActiveX Control は独立に動作するので、PowerPoint に 3D 模型を挿入するだけなら DS ActiveX Control だけでも十分である(DS Visualizer をインストールする必要なし)。有償なのはライセンス版の Discovery Studio Client である。(2014-09-30)