Acetaminophen’s diary

化学に関すること,TeXに関すること,ゆきだるまに関すること。

Marvin Sketch で化学構造式を描こう!

以前「化学のおすすめソフト (2014-09-01)」という記事で紹介した構造式描画ソフトの中から、今回は Marvin Sketch について紹介する。Marvin SketchJava ベースのソフトウェアで、Marvin Beans というパッケージに含まれている。

という4形態で配布されていて、しかもライセンス条項に以下のように記されている:

Free usage of MarvinSketch, MarvinView, MarvinSpace, MolConverter and JChem for Excel.
Marvin is ONLY free if it is used on a standalone basis. The usage of these applications is free of charge provided that they are not used as integral parts of other applications including but not limited to any ChemAxon applications or any of your or third party’s software products or applications.
MarvinSketch, MarvinView, MarvinSpace and MolConverter applications may be accessed:

  • by downloading the Marvin Beans or the JChem package and running the appropriate batch files, shell scripts (msketch, mview, mspace, molconvert) or desktop launch. (Other usages of Marvin Beans or JChem are not free of charge.)
  • as Java Web Start applications from a page at ChemAxon's web site. (Only MarvinSketch, MarvinView, and MarvinSpace.)

The license does not include the Calculator Plugins.

End User License Agreement (EULA) - ChemAxon

つまり、Marvin Sketch に関してはスタンドアロンであれば(=他のツールと連携させるのでなければ)無償で使えると考えていいはずである!

というわけで、オープンソースではないのだが比較的自由に構造式を描画できるソフトとして Marvin Sketch が便利なので、今回はこれを使って構造式をきれいに書いてみようと思う。他に紹介している ChemSketch や Accelrys Draw に比べて多くのプラットフォームで利用できるので、役に立つこと間違い無し*1

インストールの手順では特殊な作業が不要なので省略し、早速使い方へ。

 

使ってみよう

Mac 版で説明するが、Windows 版でも同様に使えた。他の OS は未確認。

起動するとエディタが出現。

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エディタ左のツールバー一番上が炭素結合の鎖を描くためのボタンで、結合次数を変更する際にも使う。長い鎖を描くには二番目のジグザグ線が便利。右側のツールバーは元素を変更する際に用いるもので、下のツールバーは環構造を描くための基本的なテンプレート。

とりあえず下のツールバーから「ベンゼン環 (Benzene)」を選択し、エディタ上でクリックする。3つくっつけてみた。

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これでアントラセンの出来上がり。簡単!

さらに構造を描き足す。中央のベンゼンからもう一個ベンゼンを生やし、鎖を伸ばしてみる。結合次数を変える(例えば単結合を二重結合にする)には、左側のツールバー一番上のツールを使い、変更したい結合の線上でクリックする。

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あとは右側のツールバーから酸素Oを選択して、変更したい数か所の炭素原子をクリック。フルオレセインの出来上がり。フルオレセインというのは緑色の蛍光を発する蛍光色素で、生物系の研究でよく用いられている。

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説明を相当端折ったが、使っているうちに慣れるので気にせずどんどん描いてみよう!

最後に、保存

Marvin Sketch 特有の .mrv が標準だが、他のソフトで扱いづらいのであまり推奨しない。汎用ファイル形式の .mol か、ChemDraw 標準の .cdx が無難だと思う。画像として使うのであれば Export to Image でもよく、PDF, EPS, PNG, JPG などが利用できる。

Word や PowerPoint に貼りつけるには

画像として保存してから貼り付けるという手もあるが、Marvin Sketch のエディタ上で Copy し、Word や PowerPoint の貼り付けたい箇所で Paste してもかまわない。後者の場合はベクターグラフィックスとして扱われ、しかも Windows に限っては図をダブルクリックすれば元の Marvin Sketch 上で再編集できるという便利な機能もある。

TeX 文書に挿入するには

こちらの記事をどうぞ。

Open Babel で画像に自動変換することにより、簡便に取り込むパッケージを開発。

 

ついでに、Open Babel について

化学ソフトウェア紹介の記事なので、ついでに既に(ケムステを含めて)数回に分けて紹介した Open Babel について、使っている間に新たに気づいたことを数点紹介する。主に不具合や注意すべき点である。

SMILES 表記からの構造生成をたまに誤る!

以下はホタルルシフェリン。以下が正しい構造(ChemSpider の .mol ファイル)。

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で、同じ ChemSpider に表示されている SMILES 表記を Open Babel に入力して画像化すると、下のようになる。

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上下反転していて分かりづらいが、二重結合がひとつ足りない!

バージョンによって結果が異なる!

Wikipedia の SMILES の項目に例示されている長い文字列を変換してみる。最新の ver.2.3.2 ではこんな感じ。

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一方、一つ前の ver.2.3.1 ではこんな感じ。

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大爆発(笑) これはすごい… ソフトウェアも生きているんだなと思う瞬間。

*1:他にも Molecule editor - Wikipedia にはさまざまな類似ソフトウェアが紹介されている。オープンソースのものもいくつか存在するので、参考になるだろう。