最近の話題とお知らせ
ここ1週間に気づいたことと、やろうとしていることのメモ。
1. 「斜方晶系」が「直方晶系」になっていた!
2. 化学の日と化学週間
3. TeXユーザの集い2014にLTで参加予定
1. 「斜方晶系」が「直方晶系」になっていた!
結晶学の用語で、物性物理学や固体物理学、無機化学などでも使われる用語であるが、ついに“正しい”方向に進みつつある。群論のことばで「互いに直交した3つの2回回転軸」という対称性、つまり簡単には「三辺の長さが異なる直方体」の対称性をもつわけだから、orthorhombic の訳は「直方」がわかりやすいだろう。
↓ 今年、orthorhombic systemは斜方晶系でなく直方晶系に改訂された。そもそもa, b, c軸が互いに直交しているにもかかわらず斜方晶系と最初に訳した人は誰なんだろう。
— 泉 富士夫 (@Izumi_Fujio) 2014, 10月 27
実はそれほど直近の話題でもなく、2014年4月5日の合同評議員会議事録で、しっかり書かれている!
晶系名称変更について坂田会長より,現在用いられている Orthorhombic の日本語訳「斜方晶系」が,適切な訳語でないとの指摘があり,世界結晶年を機会に適切な訳語を日本結晶学会から提案することが提案された.議論の結果,より適切であると思われる「直方晶系(斜方晶系)」の学会決議を諮り,その使用を地道に提案していくことが承認された.
これは知らなかった… 確かにこの訳には僕も以前から疑問を持っていたし、この改定前に出版された本の中にも orthorhomobic を「直方晶の」と訳したものは存在したから、当然といえば当然。
泉先生ご自身はもちろん
たとえば「実験化学講座」や「粉末X線解析の実際」を読んでもらえばわかるように、私は書籍、解説、マニュアルなどを書くとき、"International Tables for Crystallography"中に記載されている学術用語をすべて自己流に直訳している。
— 泉 富士夫 (@Izumi_Fujio) 2014, 10月 27
とおっしゃっているし、ほかにも例えば:
- 『物質の対称性と群論 / 今野 豊彦 著 | 共立出版』:primitive orthorhombic lattice =「単純直方格子」
などが「直方」と訳している。一方、化学系のバイブルの一つである
などは orthorhombic = 「斜方」と訳している。今後“正しい”用語が普及して定着することを祈るばかりである。
ちなみに泉先生は VESTA という Windows, Mac OS X, Linux で動作する“結晶構造や電子・核密度等の三次元データ及び結晶外形の可視化プログラム”を配布していらっしゃる。以下の論文では VESTA で作図された結晶構造の図が使われている:
こちらの Supporting info から無料で入手できる CIF ファイルを VESTA で開いて表示してみる…こともできなくはないのだが、結晶解析は専門外で今のところ使いこなせそうになかったので今回はパス。
それにしても、化学を学んでいれば高校生でも知っている用語 law of mass action を「質量作用の法則」とする誤訳は、いいかげん正してはくれないのだろうか? 化学を分かりにくくし、化学の道に進む人を減らしている要因の一つのような気がしているのだが…
追記:2014-10-28
Weiss、Hessel、Gadolinの結晶系に対する概念だと「rhombic system」(ひし形の系)という名で、これを小藤文次郎が直訳して「斜方晶系」になり、前者は角度関係がわかりづらいので「orthorhombic」になったのだけれど、和訳改訂がされてなかったのか。
— 山猫 だぶ (@fluor_doublet) 2014, 10月 27
なるほど…事情も複雑。
ちなみに現高3生から施行されている新課程の教科書では,law of mass action の訳語は「質量作用の法則」から「化学平衡の法則」へ改訂されています。 http://t.co/whkesq3v3T
— Yusuke Terada (@doraTeX) 2014, 10月 27
そうなんですね、知りませんでした!
2. 化学の日と化学週間
さて、先週の10月23日は「化学の日」であった。昨年(2013)制定されたばかりで、まだ認知度は低かっただろう。
日本化学会、化学工学会、新化学技術推進協会、日本化学工業協会(以下、共同提案団体)は10月23日を「化学の日」、10月23日を含む週(月曜日~日曜日)を「化学週間」と制定いたしました。
公益社団法人日本化学会 | 新着情報 | 「化学の日」制定について
ちなみに、国際的には「モルの日」が制定されていたりもするらしい。
10月23日は「化学の日」になりました!アボガドロ数(6.0x10^23)にちなんでです。http://t.co/DtTANX2zHk ちなみに国際的には非公式祝日の「モルの日」(http://t.co/HV9TP9RghY)が制定されていたりもしますね。
— Chem-Station (@chemstation) 2013, 10月 22
本日10月23日は6:02AM-6:02PMまでモルの日(http://t.co/BNMOzQsHXW)。アボガドロ数がその由来です。日本では「化学の日」として各種イベントを行っています。→ http://t.co/FRl9GMNPSJ
— Chem-Station (@chemstation) 2014, 10月 22
モルといえば高校化学で最初に「化学苦手意識」が芽生える人が出てくる部分なので、化学を専攻する者としてはなんとか乗り切ってほしいと願うところ。
3. TeXユーザの集い2014にLTで参加予定
まさかのTeXユーザの集い2014にライトニングトークで参加することになった。そもそも集いに参加するのが初めてなので勝手がわからず、過去の発表資料をあさってみたが、内容も笑いの取り方も完成度が高い… しかも
ちなみにこの解説記事のブログ主さんは,TeXユーザの集い2014のライトニングトークセッションに登壇なさいます。「化学は美しい:LaTeXとの融合」というテーマで,自分も聴くのが楽しみです。 http://t.co/bdQeK4jFwI #texconf14
— Yusuke Terada (@doraTeX) 2014, 10月 22
登録後にこんなツイートが流れてしまってハードルが上がってしまったwww
まだ資料完成には程遠いのだが、がっつり化学の話をするつもり(笑)
他の発表では特に Unicode の絵文字の話が楽しみ♪
どうせ人の講演を聞きに行くなら、自分も喋っちゃえ! ということでライトニングトークに初挑戦することにしました。11月8日「TeXユーザの集い2014」 http://t.co/D8SdhslX1N Unicodeの絵文字についてちょっと話します。しかし、アウェイ感半端ないなあ。
— 小形克宏 (@ogwata) 2014, 10月 24
以上。