Acetaminophen’s diary

化学に関すること,TeXに関すること,ゆきだるまに関すること。

化学のおすすめソフト

さて、専門の化学に関する記事を。

といっても、まずは PC ツールから。学生であればいろんなソフトが無料で利用できる。スクリーンショットは面倒なのでリンクを付けた公式サイト参照。

 

構造式を描く

僕は基本的に化学構造式を ChemSketch を使って描いている。初めに知ったソフトで、今ではすっかり使い慣れてきた。ブルーバックスで紹介されていたり、化学者のつぶやきで紹介されていたりと、たぶん一番有名な構造式描画フリーソフトだと思う。

最近は Accelrys Draw というソフトもいいな、と思っている。Accelrys Draw には「Structure Resolver」というネットワーク経由で構造式をインポートする強力なツールがあるのがすごい。こちらは例えば情報リテラシーの本で使い方が紹介されている。

以上2つは Windows 専用だが、Mac なら Marvin Sketch という Java ベースのソフトがある。どれも操作性はほとんど同じで、説明書がなくても簡単に使える。

商用目的であれば、ChemDraw を購入するのが一番良いと思う。

 

分子モデルを表示

クロスプラットフォームRasMolPyMOL を使えば、タンパク質分子のような大きな分子や集合体もきれいに表示できる。あるいは、Java ベースの Jmolクロスプラットフォームである(Jmol の解説は僕がケムステスタッフとして投稿した記事を参照 (1), (2), (3) など)。

Windows 用(Linux も一部可)の Discovery Studio Visualizer は分子表示にとどまらず高機能である。DSV は化学者のつぶやき有機化学美術館・分館で紹介されているし、他のソフトも Web リソースで使い方は調べられる。

 

分子軌道法計算

Windows 用の Winmostar など。それほど使ったことはないので詳細は割愛(ほかの説明も雑だが)。

 

化学フォーマット変換・ケモインフォマティクス

Open Babel はオープンソースで、化学系のさまざまなファイルフォーマットを変換するために使える。分子のモデリングというよりは“分子の情報学”(ケモインフォマティクス)に役立つ。僕がケムステスタッフとして投稿した記事も参照。

 

だいたい普段使うのはこのくらいだ。化学系ではやはり TeX を使うのは敷居が高い。TeX 系なら学生でなくでも自由に使えるが、XyMTeX などはさすがに敷居が高い。

によると鉄緑会の化学問題集は TeX だそうだが、これでもまだ手間がかかる*1

ChemDraw や ChemSketch, Accelrys Draw, Marvin Sketch に共通して、こうした専門の構造式描画ソフトを使うと

  • 化合物を勝手に命名してくれる
  • 物性などに関するパラメタを計算してくれる
  • とにかく操作が簡単
  • …他多数

のようなメリットがたくさんあるので、学生の読者の方にはぜひ教育用フリーソフトを使って欲しいし、将来必要な時には ChemDraw を購入するくらいでもいいと思う。

 

ブログ記事の宣伝:実用例

僕のブログではこれらのフリーソフトを活用した事例を度々紹介する。2014年12月7日時点では例えば以下の記事がある。

これらの記事の多くはいずれも TeX という組版ソフトウェアと関連付けて書かれている。化学系では TeX に触れる機会が少ないが、非常に便利なツールである。機会があればこの TeXLaTeX とよばれるツールの初歩的な説明もこのブログで記事にする予定であるが、さしあたり TeX については以下が参考になる。

書籍としては:[改訂第6版]LaTeX2e 美文書作成入門がバイブル。インストールから一通りの基本的な使い方、さらには上級者にも役立つ情報が満載である。

Web リソースとしては:TeX Wiki が必須。あらゆる日本語の TeX 情報が集約されている。ネットで誰かに質問する前に、とりあえず TeX Wiki に情報がないか確かめてからでないと話にならない。(特に初心者は要注意!)

追記:2014-11-10 ケムステに記事を投稿。

簡単に TeX に関する記事を書いたので、少しは参考になるかも。

*1:TeX による数式を画像化するために使っていた TeX2img が、まさか化学組版のために鉄緑会の方によって開発されたとは…→ TeXによる化学組版 - TeX Alchemist Online